H28年度に改定された医学教育モデル・コア・カリキュラムでは,目紛しい医学知識・医療技術の進歩と国際的な公衆衛生や医療制度の変遷を受け,「多様なニーズに対応できる医師の養成」を基本理念として掲げている。そして,卒業時の到達目標に向かって,より明確にカリキュラムをデザイン・文書化し,それに沿って教育を行うという学修成果基盤型教育(outcome-based education: OBE)をコアとし,知識・技術はもちろん,医療人としての陶冶・コミュニケーション能力・プロフェッショナリズムなど修得すべき資質・能力についても言及されている。 医療入門T,Uともに,モデル・コア・カリキュラムの改訂を受け,その理念・ニーズに基づいて企画された教育カリキュラムのひとつである。入学後早い時期に,地域の保健・医療・福祉・介護の現状に触れることと,医師に求められる資質・能力とそれを修得するための過程を理解すること, そして小グループ討論・発表を通じて,自ら疑問点・問題点を見つけ,考え,解決しようとする,医療人としては欠かせない自己主導型学習能力の修得を目標としている。 またこのコースを通して, 医療人として,年齢,心理的・社会的背景の異なる様々な患者に対応できる高度なコミュニケーション力を修得し,患者中心の視点で医療を実践しようと努める豊かな人間性と倫理観,プロフェッショナリズムの精神を身につける。そして, 医療に関わるチームの一員として,他者と協働し良好な人間関係を構築することが大切である事を理解する。また, 少子高齢化を特徴とする現代日本社会における医療の実際を理解し,医療の技術的進歩と社会の急速な変貌が人々の心にもたらしている多くの問題に関心を持ち続ける態度を身につける。